今日はダイレクト部門とプロモ部門の審査結果が発表された。
ダイレクトのグランプリは、インドのTHE TIMES OF INDIA NEWSPAPER「LEAD INDIA」(JWT INDIA, Mumbai)である。
独立60周年のタイミングで、インドをもっといい社会にしようと、新聞をラッピングしたり、セレブにテレビに出てもらったり、
YouTubeを使って話題をバイラルさせたりしながら、理念ではなく行動で世の中を変えていこうと呼びかける壮大なキャンペーンである。
「LEAD INDIA」を手がけたJWT INDIA, Mumbaiのチーム
ゴールドを取ったベルギーのMUSIC FOR LIFE CHARITY EVENT「BLACK BOY WANTING WATER」(MORTIERBRIGATE Brussels)も興味深い。
アフリカには、キレイな水が飲めずに死んでいく多くの子供たちがいるのだが、テレビ番組のオンエア中に、なんの前触れもなく黒人の子供が出てきて、
キャスターの隣に置かれた水をゴクゴク飲んで立ち去るというハプニングにハッとさせられる。この入賞結果が発表されたとき、会場は大いに盛り上がった。こっちがグランプリでもおかしくはなかった。

プロモ部門のグランプリは、アメリカのHBO「VOYEUR INTEGRATED CAMPAIGN」(BBDO NEW YORK)である。これもかなりよくできたキャンペーン。
アメリカのケーブルテレビHBOで流れている、さまざまな人気ドラマ番組のワンシーンが一軒のマンション内にあるたくさんの小部屋で、互いに影響しながら、
まるで同時進行しているように見せる映像を、巨大なスクリーンに映し出したものである。
プロモ部門では日本から2作品が入賞。日本野鳥の会の「VOICE OF ENDANGERED BIRDS」(ビーコン コミュニケーションズ)、
NTTレゾナント・gooの「SOCIAL MEDIA SAVE THE EARTH」(博報堂ケトル)である。詳しくはカンヌのオフィシャルサイトをご覧いただきたい。
(http://www.canneslions.com/)日本野鳥の会については、6月23日発売の「広告批評」でも触れている。
壇上でライオンを受け取るビーコン コミュニケーションズ佐藤秀一氏
ここに挙げた5作品のうち、実に4つが、地球環境やエコなどの社会的アプローチのキャンペーンであることが興味深い。
実際、受賞作にはそういったソーシャルキャンペーンが目立つ。あと、この発表を見てもうひとつ印象的だったのは、
グランプリレベルの作品に関しては従来のダイレクト、プロモというカテゴライズが(少なくとも素人目には)無効になりつつあるということ。
「ダイレクト=ダイレクトメール等」、「プロモ=店頭での販促」という狭いイメージを超えたところで何かが起こっている。やはり「広告」は変わろうとしていると感じた。
この両部門の審査員を務めたダイレクト部門の田村昌一氏(電通)、プロモ部門の池永忠裕氏(電通)より直筆のコメントを頂いている。
ダイレクト部門審査員 田村氏のコメント
プロモ部門審査員 池永氏のコメント
右より田村氏、池永氏
昨日書かなかったのだが、サイバー部門等に出品されているユニクロの「UNIQLOCK」は、予想通りこちらでかなり注目を集めている。
“ブレイク”の予兆が漂っている。それは「UNIQLOCK」が、いま求められている広告を超えた“広告”を感じさせるからだと思う。明日はメディア、アウトドア部門の発表がある。
編集部 河尻亨一
今年のダイレクト部門の記者発表では、審査員長のマルシオ(・セイラム)の "Beyond the Line" という言葉が象徴的だった。
元々、マスメディアを伴った広告領域を指すAbove the Line (ATL) と、販促などを中心としたBelow the Line (BTL) といった言葉が使い分けられてきた。
そして会社組織もこの領域にあわせて、専門性の高い企業がそれぞれ独自に活躍してきた。
しかし、最近ではそもそもこの二つの領域にこだわらず、「全体を俯瞰して考えていこう」とThrough the Line (TTL)という言葉を使うようになってきた。
言葉の使いようといえば、それまでだが、マルシオはもはや「領域」といった概念を飛びこえて、
大きな世の中を動かすようなアイデアを中心に据えようと Beyond the Lineという言葉を生み出したのではないだろうか。Lead India(インドの牽引力となる)は、
「人を、国を動かす」というムーブメントを起こすためのビッグ・アイデアが始点となった作品だ。
そして、プロモ部門の記者発表。「プロモーション」のあり方を根本から見つめ直すつもりだと、カンヌの前から語っていたアルミン(・ヨッフム)審査員長。 誰もが理解できそうな「店頭を中心に販売促進をはかる」という王道ともいえるアプローチとは別に、新しいビッグアイデアが大事だという。 ビジネスのあり方が変わってきているからこそ、新しい視点を持たないといけない、と。
同じ作品が異なる部門で受賞する傾向は強まっていくだろう。領域を超越したアイデアを評価しようというのだから当然だ。
ただ、それぞれの部門における強みを評価することを広告賞は忘れてはいけない。確固たるプロフェッショナリズムという土台があってこそ、大きなアイデアが羽ばたけるからだ。
石井うさぎ(博報堂/制作ディレクター)
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